「顧客ニーズを知ることが、ビジネスの鍵」と言われる。しかし、耳を傾けているだけでは新たな顧客獲得にはつながらない。顧客を、自ら宣伝役を買って出る「伝道師」に育てるためにも、ITを駆使すべきだ。顧客満足度向上へのキーポイントと今後の方向性について、CRMに造詣の深い根来龍之氏に話を伺った。
顧客満足度を向上できるひとつの方法は、顧客の中に存在する「伝道師」を増やすことだ。商品の品質や接客態度などに感動した顧客は製品や企業のファンとなり、一方、クレームを抱えた顧客は「テロリスト」と呼ばれる存在になり、企業にとって大きなリスクとなる。ファンは自ら、口コミで製品や企業の良さを周囲に伝えてくれるが、テロリストは自分の感じた不満を周囲に吹聴するなど、積極的に攻撃を加えてくる。
コールセンターの対応の遅れや問い合わせのたらい回しは、テロリストを生む大きな要因となっている。オペレーターの応対技術はトレーニングに依存するが、迅速な対応やクレーム処理にはITが活用できる。
顧客との接触は、「一期一会」だ。その一会の応対が、顧客を伝道師にするか、テロリストにするかの分かれ道でもある。ITによる顧客満足度の向上が、企業に与える影響は大きい。
満
足
↑
顧
客
の
満
足
度
↓
不
満
売上・利益の多くを支える
一般顧客
(サイレントマジョリティ)
・企業側が意図的に調査しないとどう満足したかわからない
・再購買してくれる可能性が高い
伝道者
となる顧客
自社の製品に対して満足してくれただけでなく,他の潜在顧客に宣伝してくれる
隣人の顧客
となる人達
・再購入の可能性は低い
・次回はライバルの商品・サービスを購入する可能性がある
・市場シェアの低下になる
バリアー
となる顧客
・購入した商品・サービスに不満で積極的にその不満を伝えようとする
・他の潜在顧客の購買を阻止する
・テロリストにもなりうる
小 ←
影響度
→ 大
ネットワークの発達により、顧客は多くの商品情報を得られるようになり、顧客どうしの情報交換も盛んになった。商品の使い方や評価など、顧客が抱える情報も大量に発信されている。それまで企業が考えもしなかった商品の使い方から、大ヒット商品も生まれている。
今後の顧客サービス部門の重要な役割は、単に顧客の言い分を聞くだけではなく、その主張の中から企業にとって有益な情報を探し当てることだ。具体的には、製品やサービスの「機能評価」や「他社との比較」など、もともと顧客が持っている情報をいかに収集するか。コールセンターなど最前線の部署で取り込んだ「顧客が持つ情報」を瞬時に取り出し、タイムリーに活用するためのシステムを構築しなければならない。例えば、UCカードでは、顧客からの電話など、コンタクト履歴をCTIにより全社で共有し、製品開発部門、企画部門などが「顧客の声」を即座に利用できるようになっている。
根来 龍之 氏
(ねごろ たつゆき)
早稲田大学IT戦略研究所
所長・商学部教授。大学院商学研究科教授(IT戦略モジュール責任者)。慶應ビジネススクール講師。
1952年三重県生まれ。慶應義塾大学大学院経営管理研究科修士課程修了。英ハル大学客員研究員、文教大学教授などを経て、現職。専門は、戦略経営論、システム方法論、情報システム論の統合分野。経営情報学会誌編集長。CRM協議会副理事長。組織学会理事。Systems Research誌Editorial Board。
大手クレジット会社「UCカード」は、コミュニケーションセンターへの問い合わせ件数の増加と、コミュニケーターの応対の質を向上するため、CTIシステムの機能強化を行った。
電話応対や自動音声応答サービス、Webのコンタクト履歴などがCTIに統合され、全社で共有できるようになった。
これにより、迅速で正確な電話応対、事務処理における80%のペーパレス化による処理時間の削減を達成。コミュニケーター1人当たりの受電件数は約1割増加した。
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